草木図譜 ブッソウゲ


やんばる(沖縄本島北部)にて撮影
 ヒビスクス(ハイビスカス)属には、およそ250種の植物があると言われます。ムクゲやフヨウ、モミジアオイ、ハマボウ、ケナフなどもすべてこの仲間ですが、普通ハイビスカスと言えば、熱帯〜亜熱帯の気候を好むブッソウゲやハワイアンハイビスカスなどを指す事が多いようです。
 沖縄で「アカバナー」と呼ばれ、古くから親しまれてきたのはブッソウゲ。よく枝分かれして樹高5mほどになり、最大で直径15cm、雄しべと雌しべが合着した長い蕊柱(ずいちゅう)を持つ花を咲かせます。ひとつの花の寿命は一日限りですが、次から次へと咲き継いで、沖縄では一年中咲いています。それでもやはり時期によって花の多い少ないはあるようで、5〜10月くらいが盛りとのこと。なお花数は多いのですが、実を結ぶことはあまりありません。
 ブッソウゲの原産地ははっきりしませんが、インド洋諸島とも言われ、ヒビスクス属の植物同士の交雑によって誕生した雑種と考えられています。熱帯〜亜熱帯地方で広く栽培され、沖縄には古い時代に渡来したようです。よく茂って花が絶えないことから沖縄では生垣に利用され、また「グソーバナ(後生花・来世、あの世の花の意味)」とも呼ばれて墓地に植栽され、墓前・仏壇に供える花として用いられてきました。沖縄では常に人とともにあった花のようで、人里離れた場所に生えることはまずないとのこと。たまに山の中で咲いているのも見掛けますが、それはかつてそこに人が住んでいた名残だということです。
 現在では、沖縄でもハワイアンハイビスカスがよく植栽されています。ハワイアンハイビスカスは赤、ピンク、オレンジ、黄色、白と品種によりさまざまな花色を持ち(黄色とオレンジの組み合わせなど、ひとつの花で2色以上の色を持つ品種もあります)、ブッソウゲよりも大輪の花を付けるものが多いようです。これらは、ハワイに自生するヒビスクス属の植物に、ブッソウゲやフウリンブッソウゲ(ザンジバル島原産と言われます)などを交配して作り出された園芸品種群で、その数3000以上にも上ると言われています。ブッソウゲもハワイアンハイビスカスも、高温と日照、そして十分な水があれば栽培は簡単ですが、低温には弱い植物。越冬には最低5〜10℃くらいの気温が必要でしょう。
 なお余談ですが、「ハイビスカスティー」という一種のハーブティーが市販されているのをご存じでしょうか? パッケージにはブッソウゲかハワイアンハイビスカスに見える花が描かれていることが多いのですが、その原料としては実際にはロゼール(ロゼリソウ)という植物が用いられています。ロゼールの学名はヒビスクス・サブダリファで、確かにヒビスクス属なのですが、ブッソウゲやハワイアンハイビスカスなどよりずっと小さな、径10cm足らずの黄色の花を咲かせる植物です。真っ赤に色付く茎や萼が印象的で、切り花として販売されることもあります。茎からは繊維が採取され、多肉質の萼からは酒やジャム、ハーブティーが作られています。ロゼールのハーブティーは美しい紅色で酸味があり、その栄養価は高く、各種ミネラル、ビタミンC、アミノ酸等を豊富に含み、眼精疲労・肉体疲労・むくみの解消などに効果があると言われています。


ブッソウゲ(仏桑花・扶桑花) アカバナー ヒビスクス・ロサ-シネンシス ハイビスカス・ロサ-シネンシス
*参照→ハイビスカス(園芸品種群)

学 名 
Hibiscus rosa-sinensis L.
分 類 アオイ科ヒビスクス(ハイビスカス)属
原 産 不明
タイプ 常緑低木〜小高木
栽 培 水はけのよい土に植え、日当たりのよい場所で栽培する。初夏〜秋と開花期が長いので、その間追肥を忘れずに。最低越冬気温は5℃前後
home